捉え方の違いによって

仕事はあるのに作業する人材を確保できない。IT業界は慢性的な人材不足と言われ続けています。
理由のひとつに、ITの仕事が多忙を極めるために学生が敬遠しいている。あるいはそもそも理数系の学生が減っているなど若い人材が足りないことが要因とされています。
では、実際の現場ではどうなのでしょうか。

そもそもIT業界というのは人材を供給する側のITベンダーと、サービスを受ける企業との間で成り立っています。実はこのITベンダー側の人材不足の受け止め方とサービスを受ける企業側とでは温度差が生じているようです。

2007年度、2009年度時点での調査によると、ITベンダー側が認識している年間人材不足感は87.4%から48.8%にまで改善しているとの結果が出ています。ところが、企業側のITエンジニア人材不足感は91.3%から84.5%と、やや改善したレベルにとどまっているという結果でした。この差の中身はどういったことなのでしょうか。

ITベンダー側は人材の数を意識しているのに対し、企業側は人材の質を求めているようなのです。企業はエンジニアに対し、高い技能やスキルを求めます。この高い技能やスキルとは、「システム案件を整理できる上流工程がこなせる力を有した人材」です。ITベンダーが感じているように下流工程と呼ばれるプログラミングやテストを行う人材は年々増えつつあります。企業はこうした人材と直接交渉するわけではなく、システム案件を設計図としてまとめられる人材と交渉します。設計図とは相談しながら解決策を提示することですから、10年以上の経験が必要となります。
しかし、ITベンダーが人材を多く投入して人材不足を補いつつ育成を図ろうとしても多くのITエンジニアは3年程度で転職します。ほとんどの場合、プロジェクト修了とともに解雇されることが多いからです。ITベンダー側は人材を育成してもその人材がベンダーに残らないわけです。高い技能を持った人材が慢性的に不足するのにはこうした背景があります。

こうしたことから近頃では企業側がITベンダーと交渉できる人材を確保する動きもあり、人材不足を補うようにしています。

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